kao-kao日記

優しい時間と笑顔の輪が広がりますように…。

この空の下でめぐり会うということ


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「オハヨウゴザイマ~ス」

Sくんのママ(Bさん)が、片言の日本語でそう言うと、ニコニコしながら携帯の画面を見せてくれた。そこには翻訳された日本語が並んでいて、

「わたしのベイビーはいつもあなたをたずねてくる」

一瞬「ん?ベイビー?たずねる?」と思ったけれど、間違いなくSくんのことで、どうやら家でもわたしのことを話してくれているらしいことが伝わってきた。そうか、そうか。嬉しくて、ニヤニヤが止まらない単純なわたし。

カンボジア出身のBさんは、現在日本語を勉強中。授業を受けている間、わたしと一緒に過ごす息子のSくんは、運動神経が良く、とても活発なお子さんで、こちらが思わずハラハラしてしまうようなことも、平気な顔でやりとげてしまう。まつ毛が長くて、目がパッチりとした可愛い2歳の男の子。

どうしても伝えたいことや、大切なことは翻訳機能を使っていた。ジェスチャーを交えた簡単な英単語などを使いながら、雰囲気などで何となく伝わっているのだなと思ったけれど、普段の会話でどれだけわたしの日本語が通じているのか、正直少し不安でもあり、時には、通訳の方を交えてお話しさせて頂くこともあった。

ママがSくんに話しかける時は英語を使っていたので、Sくんも全ての日本語を理解しているわけではなさそうだったけれど、笑顔は世界共通のコミュニケーションツールなのだなと、海外の方とお会いするたびにいつも感じている。笑顔って、やっぱり大事だ。

 

Sくんは毎朝4時に起きるらしく、そのことをよくBさんが困ったような顔で(でも笑いながら)話してくれたのだけれど、早起きしすぎて、遊び疲れ、水分をとりながら眠ってしまうこともあった。

眠くてママを思い出して泣いている時には、宥めながら抱っこし、歌を歌っている最中にストンと眠りに落ちた。この時ばかりは、わたしって天才!などと思うのだけれど、あれだけ動き回れば、パタッと眠らないことの方がおかしいのかもしれない。それくらい、起きている時間にパワーを使って遊びきるという感じのお子さんだった。

季節的に、七夕さまを歌うことが多かった。早いテンポでは気がつかなかったのだけれど、「笹の葉さ~らさら~」と、ゆっくり揺れながら歌うと、Sくんもとてもリラックスできるようだった。たくさん歌った。

いつかどこかでこの歌を聴いた時に、頭の片隅にでもわたしのことを思い出してくれたらいいな。いや、わたしのことは思い出さなくてもいいから、どこかで聴いたことがあるけれど…なんて、少しでも覚えてくれていたら嬉しいな。そんな風にちょっぴり思ったりもした。2歳だからきっと忘れてしまうかな。

 

前期の日本語教室が、あと数回で終わろうとしていたある日、

「わたしの息子あなたのことたずねると選んだ」

Bさんの携帯の翻訳画面をのぞくと、確かこんな風に訳された日本語が並んでいたのだけれど、一緒に“どうぞ”と渡されたセブンイレブンの袋には、クリームパンが入っていて、Sくんがわたしのために選んでくれたのだという。その気持ちがありがたく、たかがクリームパンと思われるかもしれないのだけれど、特別なもののように思えて、何だか食べてしまうのがもったいないくらいだった。

 

最後の日、「またね」と手を振ると、ベビーカーに乗ったSくんが、何度もこちらを振り返ってアピールしている。(さよならは寂しくなるからついまたねと言ってしまう)そう言えば、会ったばかりの頃は、ママと離れるのが悲しくて大泣きしたこともあったな。よくある光景なのだけれど、こういう気持ちは痛いほど良くわかる。ママの気持ちも、お子さんの気持ちも。かつて小さかったわたしがそうだったように、息子もそうだったからだ。

 

住み慣れた場所を離れ、言葉が通じない国で生活するということは、苦労もあるし、どんなに心細く、大変なことだろう。それでも、明るく前向きに生きている方たちを、何人も知っている。

地球上には、星の数ほどたくさんの人がいるけれど、いろんなご縁があったり、偶然が重なったりしながら、この空の下で誰かと繋がることや、めぐり会えるということは、もしかしたら奇跡なんじゃないかなと思う。こうしてブログを読んでくださった皆さんとも…。

 

 


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月の映る穏やかな海を眺めながら、波の音に耳を澄ませ、まだ行ったことのない遠い異国の地に思いを馳せる。この海のずっとずっと向こうにも、たくさんの人が生活していて、きっと様々な文化や物語があるんだろうな。

 

 

 

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わたしが風景画を描こうとすると、どうしても油絵みたいなタッチになってしまう。本当は、淡く透き通った感じで描きたかった。

 

 

 

 

 

 

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北海道の皆さま、ご無事でしょうか。

台風が日本列島に爪痕を残した矢先の大地震。今もなお余震が続き、眠れず、不安な日々を過ごされていることと思います。一日も早いライフラインの復旧と、安全で穏やかな日常に戻りますよう、心からお祈り申し上げます。