素晴らしい色の世界
高校3年生まで、とある美術研究所のi先生の元へ通っていた。
“研究所”というと何だか大それた感じがして少し恥ずかしかったのだけれど、絵画教室のことで、今思えば私は美術を研究していたのである。(してたのかな?)
研究といっても、先生が事細かく説明などをするものではなく、描きながら自分の目でしっかり確かめ、自ら学び、それを自分のものにしていくような感覚だった。
そこへ小学3年生の頃から週に1度通っていた。
i先生のアトリエの入り口にはバラやハーブなどが植えられていて、時々それらをスケッチしたりもした。
紫色のヘリオトロープの花弁を描き、あまりの細かさに褒めていただいたこともあった。(以前のブログでも書いたような気がする)
それがとても嬉しかったのを覚えているのだけれど、子どもの頃の褒められた経験はずっと記憶に残るものである。
学校の勉強は苦手だった。
小難しいことは今でもよく分からない。
私にとって絵は自由に描ける世界で、描くことで随分と現実逃避をしてバランスをとっていたように思う。
絵画だけでなく、時には彫刻や七宝焼きなどもさせていただいた。
進学先も美術系。
その筋の人達が集まる場所なので、上手い人に押しつぶされそうな日々だったけれど、寝る間も惜しんで描くことに没頭していた。
もう20年以上昔の話。
i先生の絵は優しい光のようだった。
晩年は仏画をよくお描きになっていた先生の作品は、見ていると心が清らかになるような、透明感のある柔らかい色彩のものが多かった。
その色たちがいつまでも私の心の中で躍っている。
長い年月が過ぎ去っても、本当に躍っているのだ。
それは絵を描くことだけではない素晴らしい色の世界。
ふと見上げた空の中に。
小鳥のさえずる木々の葉に。
優しく香る花たちに。
見るもの全ての景色の中に。
きっとこれからも生き続けていくのだろう。